2021年2月28日日曜日

森に住んでいる白いクマ (2011/2/2作品)

 この世界のどこかに森に住んでいる白いクマがいると言う。

遠い昔氷の国からやってきた。
世界がどんどん暑くなってきた時、氷の世界はどんどん小さく狭くなったため住めなくなってしまった。
何年も何年もかけて住む場所を探し続けようやく落ち着いた先がこの森だった。

年月が過ぎとうとう最後の一頭になってしまった白いクマ。
自分の祖先がどこに住んでいたかもわからないくらい時が過ぎていた。

何故自分だけが白いのか、何故こんなにも冬がうれしいのかこの白いクマは分からない。

そして今年もまた雪の降る季節がやってきた。
自分以外のクマはこの寒い時期冬眠をしてしまうため一人ぼっちで過ごす。
一人ぼっちでも全然寂しくは無かった。

だって待ちに待った季節だったのだから。
心が踊り狂うくらいうれしい季節がやってきたのだから。

気がついた時には自分は一人だった。
親がどこに行ったのか分からない。
この森は白いクマに優しかったから生きる事が出来た。

この森に雪がに深々(しんしん)と降り積もる。
白いクマはその景色に溶け込む。
まるで初めからそうあったように。

両手を広げ雪を受け止める。
掌に落ちてはすぐに無くなる白い雪。

一瞬垣間見える結晶を白クマは何度も何度も見ていた。

この結晶をたくさん集めることができたらどんなに良いだろう。
たくさん集めていろんな葉っぱの上に飾ったらどんなに綺麗だろう。

すぐに消えてしまう雪の結晶に何度も何度も手をかざす。

白白白。
自分と同じ白。
この寒さが心地良い。
この冷たさがうれしい。

いつの間にか白いクマは踊りだしていた。
くるくる回ったり両手を広げて寝転んだり。

ここは白いクマだけの世界。
1年でほんの少しだけ神様に与えられた白クマだけの氷の世界。

どうしてこんなにもこの世界が愛おしいのかその理由(わけ)を白いクマは分からない。
どうしてこんなにもこの世界が恋しいのかその理由(わけ)を白いクマは知らない。

この世界のどこかに森に住むという白いクマは遠い昔は氷の世界に住んでいたと言う。

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