2015年10月24日土曜日

残されたオレンジジュース

 不思議な体験というのは誰にでも一つや二つあるのではないでしょうか。
そういう私にも説明がつかない経験をしたことがあります。
その中の一つをお話しましょう。
そう、あれはかなり昔のこととなります。
その当時は築40年の旧公団住宅に住んでおりました。5階建ての4階で間取りは3K。
ふた間続きの和室は襖を外し子どもがどこで遊んでいても目が届くように一部屋として使っていました。
娘は幼稚園へ通っており保護者が園までの送迎をし、通う園児は必然的に近所の子が多くなります。
保護者同士の仲もそこそこ良く同時に子どもたちも仲が良かったのでお互いの家に遊びに行ったり来てもらったりすることが盛んだったように思います。
多少煩わしさはあったもののそれが当たり前となっておりました。
そんなある日、どういう話の流れだったか忘れてしまいましたが、自宅に子どもの友達数人に遊びに来てもらった時のことです。
今振り返ればおかしなことばかりですがその時は全く気付くことはできませんでした。
季節は夏だったかと思います。
ちょうど今日のように天気も良く日差しもきつい、そして多少の蒸し暑さも感じるような日でした。
私は子どもたちにオレンジジュースを用意しました。
子どもの人数を確認しその数だけコップにジュースを注ぎ、座卓に置きました。
遊んでいた子ども達はそれぞれジュースに手をつけます。
4階ということもあり窓からは夏の風が時々吹いていました。
その後も楽しく遊んでいる姿を眺めていたように思います。
眺めていたのだと思うのです。
夕方になると子どもたちの母親が迎えに来て一人また一人と帰って行きました。
最後の一人が帰ってしまうと急に静かになった部屋に違和感を感じました。
もう一度部屋を見渡すとオレンジ色が目に飛び込んできました。
良く見るとテーブルの上のオレンジジュース。
私が置いたままの状態でした。
他のコップはすべて飲み干されて空。当然部屋にいた子どもたちが飲み干したのです。
おいしそうに飲む姿も見ていました。
テーブルの上には出したお菓子も食べられた後の包み紙が散らかっています。
普段なら小さな子どもが走り回ったりすると危ないのでコップなどはすぐ片づけるのですがその日に限って子どもたちが完全に帰ってから片づけたのです。
1杯だけ飲まれずに残っていたオレンジジュース。
なぜ私自身がそのことに最後まで気付かなかったのでしょうか。
なぜ残っているジュースを欲しがる子が一人もいなかったのでしょうか。
やはりそのジュースを飲むべき子がこの部屋に居たとしか思えないのです。
用意したジュースの数ですか?5つです。
でもね、子どもたちは幼稚園から私の車で連れてきたのです。
助手席に自分の子、後部座席に3人。
楽しそうに自宅で遊んでいた子どもたちに当然のことながら知らない顔はありませんでした。

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