「せきとうおうりょくせいらんし」
「え?せきと?」
3歳くらいの男の子がお母さんに手を引かれ顔を上げて聞いている
「赤橙黄緑青藍紫。これは虹の色なの」
あぁこれは夢だ。
まだ虹を見たことがなかった小さいときの俺。
「にじ?」
「そう、虹。お空に大きな七色の橋が架かるのよ。セイちゃんにも見せてあげたいわ」
この時の影響か俺は虹の出そうな時はつい空を見上げる癖がついてしまった。
成人を期に一人暮らしを始め忙しさにかまけてここ数年帰省出来ていない。
今も会社のデスクのうたた寝をしてしまったらしい。
そっと周りを見渡す。
うん、誰にも気づかれていない。ラッキー。
窓の外を見ると遠くの空が雨雲で真っ暗になっている。
あの雲ここまでやってくるのかな。
こっちは晴れてるんだけどなあ。
そんなことを考えながら今日中に仕上げなければならない仕事に取り掛かる。
誰かが「虹が出てる」と言うのが聞こえた。
自分も外を見るとさっきの真っ暗な雨雲の所に大きな虹が架かっていた。
とても近くて大きい。
七つの色もはっきり見える。
虹なんて何度も今まで見てきたはずなのに見るたびに感動するのは何故かな。
今晩、帰ったら母親に電話してみようか。
「青藍元気にしていた?何か手伝いに行こうか」
とお決まりな言葉が返ってくるに違いない。
俺はそんなお決まりな言葉が聞きたくて電話するのかもしれない。
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